【AIの遺電子】人工知能やヒューマノイドが当たり前の近未来SF漫画【感想】

AIの遺電子 1 (少年チャンピオン・コミックス)

週刊少年チャンピオンで連載中の山田胡瓜先生の漫画・AIの遺電子。

今急速に進化し続けているAI技術。人間の脳を忠実に真似したAI・ヒューマノイドが日常化した世界で様々な出来事が起こる。

人工知能系作品の中でも変わった設定や制限があるヒューマノイドSF医療漫画です。

この作品の魅力をあらすじや設定、ネタバレしつつ感想を書いていきたいと思います。

AIの遺電子

人類の夢…テクノロジーの結晶・ヒューマノイド。 人さながらに「病」を抱える彼らには、人とは違う「治療」の選択肢があった…。 悩めるAIたちに寄り添う新医者・須堂の物語、開幕! 近未来系ヒューマノイドSF医療物語!

近未来のヒューマノイドが人間と同様に生活している世界。その技術の発達により生まれた専門のヒューマノイドの医者・須堂が主人公のオムニバス漫画

国民の1割がヒューマノイドの世界で事件にも似たヒューマノイド達の苦悩や人間との価値観の違い、AIとの関係性、愛や倫理観の共有など複雑な要素が入り混じっています。

この設定だけで興味深い作品。一番のよさは人間同様に愚かで間抜けな所もあることです。

ヒューマノイドは人間と同じ脳を持つ

ヒューマノイドの夫婦。男は配偶者の女性が階段から躓いて転んだことをきっかけにバックアップを取ってしまう。

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出典:AIの遺電子

が素人のヒューマノイドがバックアップをしたためウイルス感染により調子が悪くなった。(半月後には抜け殻になる)

その行為は全て違法であり、闇医者も行う須堂を頼ったがウイルスが原因のため直すこともできないため、バックアップを使うしかなかった。

相談を終え、須堂が帰ろうとしたらヒューマノイドの夫婦には養子の子供(人間)と出会う。須堂と子供でコピーについての倫理観を語り、同じ人格を複製することにはやはりいろんな意味で問題があるとの会話した。

今回の場合バックアップ後に一緒にいた記憶はどうするのか。当然だけど戻すことはできない。

本当に同じなのか・・・フォーマット(初期化)、人間では考えられない言葉が登場する。

今私が私だと思っているものはここで消えてしまう。

患者の意思により中止。抜け殻になるまで一緒にいる事になった。ただ、機能停止後にバックアップの復元を行い再び日常に戻る。

しかし、養子の子供とウイルス感染時の女性の記憶は合致しない。

・・・

母親が戻ってきたのは嬉しいけど複雑な終わり方です。リセットしたことは本当に良かったのか。

基本的に医者の須堂はストーリーに関わるけどメインはその家族などでストーリーの総括役みたいな立ち位置です。優しいけど厳しいブラックジャックみたいなイメージ。

この漫画の良さはここだ!

価値観や倫理観の物語

この漫画は派手な物語ではなく小さな日常を描いたヒューマンストーリー。毎回機械やAIの特徴を一つ取り上げた短編なのでストーリーがぶれなくてわかりやすいです。

この漫画の面白い設定

①体のパーツは直せる

治せるではなく直せる。例えば、高いところから落ちたら人間同様に簡単に壊れてしまいますが、脳が生きていれば直すことが出来ます。確かに便利だけど視点次第では複雑な気持ちになります。

②病気にはなるし身体能力も同等

うつ病はもちろんのこと、体の異変も起こります。最近だと髪の毛がストレスで抜ける話もありました。

③脳が壊れたら終わり

AIなんだからやり直しがきくと思ったら大間違い。バックアップを取ることは違法です。もちろん脳を弄る事も。

現実としてその行動を行ってしまうヒューマノイドもいます。

④子供は産めないが養子も多い

親がヒューマノイドで子供が人間やその逆もまたあります。人間とヒューマノイドの恋人もあり。

⑤権利保護

国民の1割がヒューマノイドなので権利を持っています。

⑥基本行動は人間と同じ

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出典:AIの遺電子

落語や陸上を行ったり、ラーメン屋をしていたり本当に普通です。

⑦人間のような挙動をするのはヒューマノイドだけじゃない

AIが搭載されたロボットやプログラミングされたロボットも登場します。

⑧変更が可能

感情や表情や感覚など多少のことなら変更できます。記憶を消すことも可能

Etc 次々と設定が追加されていきます。

人間には出来なかったことが可能になるとどうなるかの話もあれば、人間との関わり方を題材にしていることもあります。

AIの遺電子の設定は特殊

AIの遺電子はありそうだけどあまり描かれることのない世界観が魅力です。

通常AIは高度な演算処理能力を持つため人類よりも遥かに優れている部分があります。そのため集積回路につながれたコンピューターで脅威として題材になることが多いです。

ちょっと前だとジョニーデップ主演のトランセンデンス。人工知能に人格を入れて暴走するお話。

人工知能に人間性があるかを実験をする映画・エクスマキナ。

これらの共通項はAIは特殊で珍しい物であるという設定です。近い未来の危惧や不安など技術進歩によって何が起こるか、映像美などなど。

この漫画のように当たり前のようにAIが溶け込んだ世界でコンプレックスを描いた作品は珍しい。

色々な機械や悪が登場する

ただ単にヒューマノイドだけを取り扱うのではなくAIの多様性がしっかり描かれています。

ヒューマノイドは人間の脳を再現しているのに対して、そうでない物もたくさんあります。例えば恋人ロイドとか。理想的な女の子型ロボット。どう違うんだと言う話だけど、ヒト脳を再現した物でなく、人間に都合よくデザインされた商品。

古典的なロボット人形なども登場してそれは本当にプログラムなのか。悪意を持ってヒューマノイドを治療する者もいます。

話が繋がっている?

オムニバスなのに話が繋がる瞬間がある作品なんですよ。

そもそもの話人間を再現したAIがたくさんいるのは変です。

それがなぜ起きたのか詳しいことは直接的に語られることはありません。ただ伏線がそこかしこに張り巡らされています。

①超高度AI:人間社会の発展と安定のために国と一部の企業が運用している。

②MACHI

③須堂は元々著名な場所に勤めていたような話もある。

巻を重ねていくにつれて謎が深まり明らかになっていくので、どの巻から読んでも面白いけど全巻読むと物語をさらに楽しめます。

まとめ

結論!SF作品は語るよりも読んで(観て)こそ価値がある。この漫画の面白さはまとめきれない。とりあえず、AIやロボット関連のヒューマンストーリー好きには絶対おすすめです!

あと、もしもこの漫画が読破済みで好きならば、この漫画読んで真っ先に思い出した放課後のカリスマ(クローンを題材にした作品)も合うと思います。(1巻はキャラ漫画っぽいけど、3巻ぐらいからストーリーに深みが出てきます)

ではでは!