【どうぶつの国】雷句誠の最高傑作を余すことなく魅力を書く【ネタバレあり】

とりあえず読んでほしい系漫画の最高峰。

週刊少年サンデーで連載されていた金色のガッシュ!!の作者・雷句誠が別冊マガジンで全14巻まで描いた傑作・どうぶつの国をご存知だろうか?

とにかく面白い作品なのだが・・・その漫画の魅力を説明している人はあまりに少ない。

数巻読んだ程度では最大限楽しく読めたとは言えず、全巻読んで初めて分かるこの漫画をあらすじ含め詳しく解説していきます。

どうぶつの国とは

1巻の表紙を見てもらうとふんわり牛にのっかるたぬきっぽい風貌のお母さんと赤ちゃんがいる。ちょっと待ってほしい。

これではうっかり動物が人間の赤ちゃんをのんびり育てるギャグ漫画(or 育児漫画)を想像してしまうのではないでしょうか。

違う

最初は違わないが講談社漫画賞児童部門受賞という肩書きを2013年に得ているために読んだ後に肩透かしを食らったや意味不明で脳が追いつけない気分になってしまう。

これが5巻まで発売している時点であればそれでもいい。あらすじはこんな感じだ。

動物しかいない星「どうぶつの国」に暮らすタヌキのモノコ。両親を大山猫に食べられ一匹ぼっちになってしまったモノコは、ある日、見たことない動物……人間の赤ちゃんを拾う! 小さな出会いが世界を変える、奇跡のアニマルファンタジー開幕!!

合ってるけどなんか勘違いさせている・・・作者もこの1巻ではこのようなことを書いている。

このお話は初め、かわいい子育てを書ければと思っていました。ですが、いま描いているお話で(2巻の最後のこと)この赤ちゃんが、とんでもないことを決意します。描いている私の身にもなっていただきたいものである。

そう、この漫画は1巻だけを読んだ後の感想と最終巻までで全く違う気持ちになって終わる。とにかくネタバレをしてしまうがそれが無ければ途中で読むのをやめてしまうかもしれないし、面白さは伝わらないのでガンガン書いていく。

1話はずばり愛。

タヌキのモノコが川からどんぶらこと流れてきたであろう赤ちゃんを育てることになる。しかし、赤ちゃんはどこか悟っている。

あなたはうまれるべき子ではなかったの・・・

生きることを諦めかけた赤ちゃんとモノコとタヌキ達の奇跡の物語。

であるが・・・これもまた違う。3巻で全てが変わる。

2話で明らかになっていく弱肉強食と変化

2話は山猫が弱いタヌキを守ると言うお話だ。自然界における動物は弱肉強食の世界、猫たちより小さく弱いタヌキは捕食される立場にある。

強いものが全てを奪っていく世界。

それなのに、山猫はタヌキを守る。自然の摂理に反した山猫(クロカギ)

他種族の生き物同士は話すことができないがこの赤ちゃんは動物と会話することができる。

1対多数で山猫と猫が戦えば100%負ける。そこに、赤ちゃんがクロカギがタヌキを食べていないことを伝えて状況を変えることができた。本来は助け合うことなんてありえないタヌキ達の力でクロカギを助けた。

山猫がずっとタヌキ達を守ってたことを会話ができなかったゆえに知らなかった。

重厚なお話になっていく2巻

2巻までは赤ちゃん編(命名・タロウザ)。テーマの癖が凄い

タロウザは動物と会話できるが、これまで他種族との交渉などは一切できなかった。というよりも考えもしなかったというのが正しい。捕食者と被食者の関係以上のことは絶対に無かった世界にひとつの疑問が生まれる。

捕食せずに全ての動物を仲良くさせる方法は無いか?

オオカミは「取る」「奪う」だけの生きる方法がなかった。捕食者側も血を流し生きているので大変な立場でもある。タロウザはオオカミの子どもにを与えることで、親オオカミは子どもに新たな考え方で生きる方法を教えてやってほしいとタロウザは頼む。しかし、食物連鎖の世界でこれはやっちゃいけないこと。全てが崩壊しかねない。

どんな動物とも話せる鳴き声は この「どうぶつの国」では持ってはいけない力なんだ

そもそも、オオカミの件を解決したが魚も生きている。全ての生き物が仲良くすることなんてできない。タロウザはまだ魚と会話できないから仲良くなんてことを言えるが実際やろうとするには難しすぎる。

チェックポイント

まだまだ序盤でこれからさらに面白くなっていく所。テーマがちょっと重いと感じた場合は6巻まで流して読むことをおすすめする。

激動の少年期

まだまだ甘い。ここから一気に物語が進むわけではない。衝撃の6巻が待っている。

全ての動物が仲良くというわけで草食動物あるいは雑食動物はタロウザと共にコミュニティを形成する。を作ることで生きることに苦しまずに住むようになったのだ。

しかし、相容れない種族がいる。肉食動物のライオン達はタロウザ達を攻めてきたのがその中に人間の女の子がいた。

仲良くなりたかったが肉を食べる種族とは相容れない。タロウザとライオンは草を食べることは一応できるのがメインの食事は肉なので仲良くすることができないという大きな壁にぶち当たる。

だが、攻めてきた時はタロウザを中心にして戦略性のある行動をすれば本来なら絶対に勝てないライオンにも勝利することができるようになった。弱肉強食の関係が崩れると共に人間という知能の高さで戦略的に行動することも覚える。

5巻までは新たな人間が出てきたり、畑を全て燃やされたり様々な動物たちの意識の変化や全てと仲良くすることなんて不可能なのか?と疑問に感じたりまだまだ序章。

2巻で大きく舵と切って、その過程を追っていくが5巻でその世界観が徐々に見えてくる。

チェックポイント

2巻から7年後の新たな世界を作ろうとするタロウザ。ライオンに飼われた女の子のカプリとどうぶつの国を受け入れる・ジュウ。動物たちを誑かすギラー。全て動物と会話できるが育てられた環境や出生が違うゆえに価値観の違いが面白い。

衝撃の6巻

この巻を読まなければどうぶつの国を語ることはできない。

旅に出ているタロウザ達は崖に超近代的な球場の建築物がいくつも点在している場所を発見する。残念ながら廃墟となってしまい過去の遺産。

ここで大きなターニングポイントとなる。タロウザは何故動物に育てられるようになったのか?そもそも人間たちタロウザを何故助けに来なかったのか?他の動物と比べて人間があまりにも少なすぎる。

21世紀レベルをはるかに超えた技術力を持っている場所が廃墟化するような世界はいったいいつなのか?

この世界にいる人間は全て合わせて

5匹

だった。

明らかになる世界観

21世紀換算をすると変だがはるか遠い未来のSFストーリーだったわけです。科学技術が大きく発展した世界でヒトは滅んでしまった。理由については後々分かるのであえてネタバレするほどのことではない。

また、全ての動物と仲良くする方法として、肉を食う動物も食べれる食材。永遠の実があることが明らかになったが実際問題として開発されても食べれる食品のひとつとして扱われるだけだった。

永遠の実をもってしても弱肉強食は無くならなかったのだよ

永遠の実を持つリエム達の所に肉食とも草食とも違うただの破壊者・ギラーが攻めてくる。もう明らかなに意味不明な生物(キメラ)まで登場。ついにはタロウザが動物たちを統率できるようになり始めるし、ここからタロウザとギラーの対決がメインになります。

チェックポイント

ここで5人目のヒトであるリエムが登場します。ゴリラと暮らしていて、図書館で世界についてある程度知っている数少ない知的なキャラです。

もう1巻がなんだったんだと思わせる7巻

この世界に5人のヒトがいる理由はクオウにあった。全ての元凶ともいえるクオウの残したノートに全員の本名が書かれていた。

1876年 ジュウ・フリー

1991年 桃乃屋太郎座

2062年 リエム・ヴィーヴル

2278年 カプリ・ルーチェ

4078年 ギラー・ギラー・ギラー

ギラー・ギラー・ギラーて!と思ったのはとりあえず放置して、本質的なことを言えば。

クオウは別々の時に生きてきたオラ達を ここに呼んだんだ

この辺でうわー面白!ってなりましたよ。未来人が人類が滅びた世界に人間を呼んで何かしようとしてくる。私の大好きなSF要素がここまで来るとは!、ファンタジーやSF漫画は10巻超えたら100%名作の法則がここに来て登場した。ただし、エデンの檻は許してない。(最後まで面白かったけど)

エンディングどうするんだって話です。

ザックリまとめると・・・

人類滅びる。

クオウは全ての動物が仲良く暮らせる方法を考えた。

動物と話せるヒトをクオウが連れてきた。

永遠の実と言葉を使えば仲良くできるかも?

クオウ:頼む・・・(丸投げ)

タロウザは意思を継ぐ。一方でギラーは世界を滅ぼす。

全面対決。

雷句誠先生ならまとめてくれる感

この漫画は別冊マガジンという月刊雑誌なのだ。ネーム的にも(比較的)時間も余裕があるだろうし風呂敷を広げるだけ広げて盛り上がり無く終了することは絶対にない。なによりも、雷句誠先生と言う男はバトルと感動と風呂敷包みに定評がある。

金色のガッシュベルは1年ほど前に改めて全巻読んだが長く連載しているにもかかわらず紆余曲折あり引き伸ばしありをしながらも最後の戦いはしっかりしていた。正直もうお腹一杯になっていたのだが盛り上げに盛り上げて終了

どうぶつの国は7巻時点で伏線張り放題でまだまだ謎が残っているが設定を全て使い切って終わらせてくれることを確信した。何よりもキメラが出てきた辺りから雷句誠先生の得意のバトルシーンが増えることがわかったのでワクワクが止まらない。

最終決戦8巻~14巻

イケメンになりすぎた5年後のタロウザ・・・ギラーはバベルの塔にてキメラを使って世界侵略を開始していた。だがとある地域だけは侵略することができなかった。タロウザに賛同した動物たちが力を合わせて戦っていたからだった。

ここからは実際に単行本を読んでほしいところ、月刊と言うことだけあって書き込み量が凄すぎます。なにせ、たくさんの動物VS超巨大キメラなので、何百匹動物描いてんだって思いましたよ。8巻からの作画スタッフ大変だったろうな

戦い方も面白い所が多いタロウザは基本的に指揮官。人間なので対して戦力を持っていないので動物の力を借りて戦うわけです。また、冷静に考えたら未来の世界なので人間的な感情を持ったキメラや人型キメラや科学兵器などなど、これまでの7巻で描き続けていた伏線や設定を生かし続ける。

やめられない止まらないと言われたかっぱえびせんを食べなくなることがあっても、この漫画は止まらない。

毎回最終回ぐらいの勢いで物語が進むこの作品は間違いなく最高傑作なのだ。

まとめ

ちなみにこの漫画は思ったよりも売れなかったみたいです。作者が12巻にて発行部数が自分目標よりも低かったと語っていました。

世間では重いテーマが悪く作用(弱肉強食というとても重く難しい題材)したなどなどいわれているのですが・・・個人的には最高に面白くなるまでが遅かったのが原因なのかなと思っています。1巻は確かに面白いのですが続きが気になる構成ではなかった。本誌では人気だろうけどパッケージ化した単行本である1巻読んだとき最終巻まで読もうとは連載が始まった2009年には思いませんでした。私は1巻の子育て要素が強い命の大切さを教えてくれる作品が10巻以上続いてる勘違いしていました。

1巻から8巻への流れは全く読めないし、8巻でまさか青年になることを想像もしない。なんというかサンデーのメジャーも高校生編を読まなかったら1巻から読む気になれなかった感覚に似ているのかな?

どうぶつの国は全巻あわせて完全なひとつの物語。と6回目に読んだ感想を述べさせたところでお疲れさまでした。